| 第11回 ウサギの三窟 |
今日は、昔話をしたいと思います。 みなさん、聞いてくださいね。 昔、中国の戦国時代に、斉という国がありました。 そこに、孟嘗君(もうしょうくん)という人がいました。 孟嘗君は、従兄弟で斉の王である宣王(せんおう)の宰相を務めていました。 しかし、宣王が亡くなり、子の□王(びんおう)の時代になると、□王とそりが合わずに、宰相の職を解任され、自分の領地に引き篭もることになりました。 そのときに、孟嘗君の知人の一人が、孟嘗君に対してこう言います。 「賢いウサギは、ずる賢い狐から逃げるために、窟(あな)を3つ掘ると言います。それでも、何とか食べられずに済む程度です。それなのに、今のあなたには、窟が一つしかありません。あと二つ、私が、窟を掘ってさしあげます。」 そこで孟嘗君は、この知人に求められるがままに、金銀財宝をこの知人に渡します。 そして、この知人は、その金銀財宝を持って、斉の隣にある魏という国に行って、王に謁見して、こう言います。 「今回、斉王は、孟嘗君を罷免しました。魏王もご存知のように、斉をここまで発展させたのは孟嘗君の功績です。今、孟嘗君は、解任されて失業中の身です。この機会に、魏王が孟嘗君を招いて宰相にすれば、もっと魏が発展するのではありませんか。」 これを聞いた魏王は、 「もっともなことだ。」 と思い、直ぐに、この知人が持参した倍の量の金銀財宝を使者に持たせて、孟嘗君を招こうとしました。 この知人は、素早く孟嘗君のところに戻り、 「魏の招きには、絶対に応じてはなりません。」 と言い、その足で、斉に行き、□王に拝謁しました。そして、 「今、魏が孟嘗君を宰相に迎えようとしています。孟嘗君が魏の宰相になれば、斉にとってこれ程の脅威は無いのではないでしょうか。このまま放置していては、将来に禍根を残すことになります。一刻も早く、孟嘗君に使者を遣わせて、宰相に復位させるべきです。」 これを聞いた□王は、急いで事の真偽を確かめ、確かに魏の使者が孟嘗君のところに向かっているのを知って、慌てて孟嘗君を宰相に復位させました。 この知人は、宰相に復位した孟嘗君に対して、更にこう言います。 「□王にお願いして、宣王の遺骨を分骨してもらい、宣王のお墓を領地に建立して下さい。」 孟嘗君は、友人の言葉通りに、お墓を立てた。 それを見届けた知人は、最後にこういいます。 「これで、領土という窟に、宰相という窟と、宣王のお墓という窟が合わさり、三窟ができました。暫くは、枕を高くして眠れるでしょう。」 その後、再び□王と孟嘗君の仲が悪くなり、宰相を解任されてしまいます。 そして、丁度そのとき、孟嘗君の領地が、楚という国に攻められてしまいます。 □王は、孟嘗君を助けたくなかったのですが、父親である宣王のお墓が孟嘗君の領地内にあるため、しぶしぶ援軍を出さざるを得ませんでした。(中国では、遺骨は非常に神聖なものと考えられていたので、父親の遺骨を踏み躙られるようなことになれば、世間から大きく非難されることになるため) また、その後、孟嘗君は魏の宰相になり、生涯を全うします。 ちなみにこの□王は、悪逆非道の王として有名です。 燕という国に攻められ、逃亡生活の末、最後は家臣に裏切られて殺されてしまいます。 あなたは、これから生き延びる手段として、三窟を持っていますか。 持っていないのなら、今から掘らないとダメですね。 次回以降は、私の三窟をお伝えします。 |
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